2010年07月21日

一体感で勝つ!長田高校

 本格的な夏を迎え、高校野球は今やたけなわ。私はこの頃になると血がさわぎ、自然と足が球場に向かう。私はかって高校の教員の時、野球部監督を十数年間務めたことがあり、高校球児と同じように全国大会出場を夢見ていた一人だった。だからひたむきに白球を追い続ける球児にこのうえなく魅せられる。


 先日、高砂球場で兵庫予選の3回戦長田高校と加古川西高校の対戦を見る機会があった。私は、教え子がいる加古川西高のベンチが見やすいようにと、バックネット寄りの三塁側の席に着いた。加古川西高は、近年最強のチームで、優勝候補にも挙がるような強豪校でとうぜんシードされていた。対する長田高校は1.2回戦を勝ち進み3回戦に上がってきたチームである。
 

 私がまず驚かされたのは、横断幕。それには「我々は必ず勝つ!」と書かれていた。際立っていたのは、長田高校のきびきびした選手の動きとチームワークのよさだった。野球は9人の選手がフィールドの中で戦う試合だが、出場する選手とベンチの選手が一体化していた。選手の表情は生き生きとしており、それはまるで野球を楽しんでいるかのようだった。
 

 ピンチになると「タイム」をかけるベンチのタイミングも絶妙で、マウンドにすばやくナインが集まり、投手を激励する。「1点勝っとる。強気で行け。」投手もこれに応え、170cmの上背もないが、ピンチにひるむことなく打者の内角を直球で攻める。ヒット6本打たれたがすべて単打で散発だった。
 

 守備から全力疾走でベンチに帰る選手はだれも笑顔。ベンチの控え選手は、冷やしたタオルとスポーツドリンクでこれをまた笑顔で迎える。相手チームの攻撃になると、スコアラーだろうか。「ひっぱってくるぞー!」「一球目注意!」とバッテリーや守備陣に声がかかる。まさに、これぞ全員野球、これぞ高校野球だ。
 

 結果は1対0、長田高校がワンチャンスをものにして勝利を呼び込んだ。敗戦が決まった瞬間、ベンチ前でガクッと膝を落とした加古川西高の部長はしばらく動けなかった。
 これはチームワークの勝利だ。長田高校と言えば、兵庫県を代表する進学校、練習時間も1日2時間程度と聞いた。対する加古川西高はシード校、どこかに組み易し、といった考えがなかっただろうか。

 
 いざ試合になり、長田高校に先取点を取られも、いつかは取り返せるという安易な雰囲気があった。ところがスコアボードにゼロを重ねるうちに浮き足立ってきた。絶好の反撃のチャンスの1アウト1.3塁の場面でも中途半端な攻撃で得点できなかった。


 後半に入ると、長田高校の投手はストライク先行で打者を追い込んだ。これが打者の焦りを誘い、中軸打線にもフルスイングさせない、実にクレバーな投球術だった。結局この投手の術中にはまった打者は、最後まで打ち崩すことができなかった。


 個人個人の選手の力量を見比べると、加古川西高の方が上であることはわかる。しかし、野球はチームプレーである。チームとしての機能を果たすには、チーム内の団結と連帯が必要だ。これがいわゆるチームワークである。チームワークは目的が明確で、難しいほうがうまく回る。

 だから、チーム力としては劣勢のチームの方が発揮しやすい。メンバー一人ひとりがシード校を倒すという目的を達成するため、他のメンバーを信頼した上で、それぞれのやるべきことをこなす。
このチームワークが一体感を生み出すのだ。

 
 一体感と言えば、応援する生徒、父兄も高砂球場というアウェーにもかかわらず、地元の加古川西高と同じように生徒やOBが多く応援に駆けつけた。特に野球部保護者会の方の心配り・気配りにも驚かされた。
 

 私はバックネット寄りのやや3塁側の席に座っていたのだが、ある保護者会の方が「暑い中応援ご苦労様です」「よかったらどうですか」とジュースを差し出してきた。私は部外者であるが「ありがとうございます。いただきます」と快く受け取った。保護者会の方は飲み終える頃を見計らって空き缶の回収までしだした。最後には応援席のごみを集めて持ち帰っていった。
 

 なんと……。この保護者あってのこのチーム、そしてこの勝利だと思った。

2010年07月02日

完全燃焼のサムライブルー

 それは“チームの団結”を象徴するシーンだった。パラグアイ戦で120分の死闘をくりひろげ、それでも決着がつかずにPK戦。日本チームの3人目のキッカー駒野選手の自信をもって振りぬいたボールは、クロスバーをかすめて外れた。天を仰ぎ、頭を抱えた駒野選手に駆け寄った仲間が肩を抱き慰めた。

 
 ゲームキャプテンの長谷川選手は、「だれが悪いというのではない。これまで決着をつけられなった自分たちのせい」だと言い切った。「120分間のプレーはすばらしかった。胸をはって日本へ帰ろう」主将のゴールキーパ川口選手から声をかけられ、駒野選手はロッカールームで号泣したという。
かってデビッド・ベッカムやロベルト・バッジオのようなスーパースターでさえPKを外したことがある。PK戦はサッカーでない。運がなかっただけだ。


 駒野選手は、元来PKが得意で、公式戦で外したことは一度たりとない。だから岡田監督も大切な3人目に起用したのだろう。岡田監督の起用に間違いはないし、駒野選手も恥じることはない。

 日本は、南米予選でアルゼンチンやブラジルに勝ったパラグアイに勝てなかったけれど、負けてはいなかった。この試合終始パラグアイに圧倒され、いつ点をとられてもおかしくないような状況だった。それがゴールキーパーの川島選手の好セーブや死力を尽くしてのディフェンスもあり、本当よくがんばった。


 駒野選手も4試合に出場し、最後の最後まで走り続け、チームのベスト16進出に大きく貢献した。日本チームの選手の90分間あたりのチーム走行距離は107.2mで、これはベスト16に進出したチームの中で6位にあたるという。岡田監督が言うように、「ハエがたかるように何度も何度もチャレンジしていく運動量」と「脈々と受け継がれた日本チームのサッカー魂」を発揮できた。
そして、その姿に“敗者の美学”を見た。


 それにしてもワールドカップ前は、国際試合で4戦全敗し、予選リーグ3戦全敗と予想する解説者も多くいた。代表チームにはすごいプレッシャーがあったに違いない。特に岡田監督のバッシングはすごかった。そんな中での予選快進撃。ひさしぶりに胸がスカーッとした。思うに、日本の選手は開き直ったのだろう。そして、前哨戦となる国際試合の敗戦が、逆にチームの団結力を一段と高めたに違いない。
敗戦の続く中、エースの本田選手は、「いいっすか」と言ってメンバーの部屋を回り、一人ひとりとひざを交えて話をしたという。


 サッカーはチーム戦である。どんなに優れたスーパースターがいても、それを活かす組織力が必要だ。組織力を高めるには、選手スタッフなどとの信頼関係が必要だ。今大会、前回の優勝チームのドイツ、準優勝チームのイングランドが相次いで破れた。この両チームは優秀なタレントを多く抱え、今大会でも優勝候補の一角に挙げられていた。だが、予選で敗退した。これはチームワークが備わっていなかったからではないか。

 
 かって南米のある国では、PKをはずした選手が自国に帰ると射殺されたこともあった。駒野選手も「あの時は、もう日本に帰ることはできない」と思ったと言う。しかし、メンバーに励まされ前を向いて帰ってきた。そして、それを温かく迎えたサッカーフアンがいた。

 日本チームは、国を背負っている責任や誇りでなく,“闘志”をむき出しにして戦った。これこそ“大和魂”である。大会期間中にチームも選手も成長し、試合を重ねながら、組織力と守備を日本の形として作り上げていった。特に控え選手との一体感はすばらしかった。そして、新しい歴史を築いた


 関西空港での記者会見では、重圧から解き放たれた岡田監督の笑顔が印象的だった。選手インタビューでは、“一発芸”も飛び出し、チームの結束力を象徴するような場面もあり、それはまるでWBCの日本チームを思わせるようだった。
この結束力がある限り、日本チームの未来は明るいと確信した。


 感動をありがとう。
 サムライ日本。