2010年09月30日

ホッとする,いい話

 滋賀県長浜市の浅井中学校が270人271脚で50m走るギネス記録に挑戦した。これは体育大会の一種目で生徒会の発案により実行された。
 

横一線に並んだ270人、その長さは100メートルにもなったという。何度練習してもなかなかタイミングが合わず、体育大会の前日の練習でやっと一回だけ成功した。
 

号砲が鳴ると「イチ、ニ」「イチ、ニ」と掛け声をかけながら、やや早歩きで57秒でゴールした。大歓声。生徒たちは飛び上がって喜んだ。それもそのはず、今までの記録「261人262脚」を9人も上回ったのだから。それこそギネス記録が達成した瞬間だった。
  

 ところが昼食休憩を過ぎてから、男子生徒が母親とともに大会本部に来て、自分の足首を結んでいたタオルが残り5mぐらいでほどけたと申し出た。学校側は認定のための外部立会人や撮影したビデオを検証したが、タオルが解けた事実は確認できなかった。
 

 学校側は「申し出た生徒の気持ちを大事にしたい。ギネスに申請すれば、事実をごまかしたことになる。申し出た生徒の思いが無駄になる。競技の目的である『集団の和』は十分達成できた」と申請をやめることにした。
  

 校長は「記録よりも正直に話してくれたことの方が大事。生徒の勇気を大切にしたい。」と話した。
 すばらしい。私は申し出た生徒と母、そして申請を断念した長浜中学に心から賛辞を送りたい。


 学校全体が盛り上がる中でこのことを申し出るには相当の覚悟がいったに違いない。まさに「記録に残るよりも記憶に残る」とはこのこと。この真摯な態度こそギネス級ではないだろうか。
ギネスに載らなかったことは残念の限りであるが、それよりすばらしいものを子どもたちは得たのではないのだろうか。


「ごまかしたり、ずるいことをするのはやめよう!」これは子どもたちの胸に刻まれ、長浜中学校にずーっと受け継がれていくことと思う。これ以上の生きた教育はない。
  
英語の正直HONESTの語源はHONOR名誉にあるという。申し出た子どもには正直者という名誉を贈りたい。そして、長浜中学校の270人271脚の再チャレンジを期待したい。
 

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