2010年06月02日

最強の中小企業「エーワン精密」

 山梨県に奇跡的と言えるようなすごい会社がある。「エーワン精密」がそれだ。社長は梅原勝彦氏、いや梅原勝彦さんと言った方が合っているかもしれない。豪放磊落、庶民的で、町工場の親父さんを思わせる笑顔が印象的な経営者だ。
 

 この会社、何がすごいって、利益率がめっぽう高いのだ。利益率が37期連続で35%を超えており、平均すれば何と41.5%にもなるというケタ外れな数字をたたきだしている。バブル崩壊・デフレなどに見舞われても利益率は一度として35%を下回ったことがない。利益率が15%を超えると、AAAの優良企業だと言われている。凄いとしか言いようが無い。


 なんでそんなことができるんだろう。それは他社に比べ、圧倒的に速い納期にある。通常発注すると1週間から2週間はかかるところ、「エーワン精密」は受注翌日に納品するという超スピード体制をとっており、コストが少々割高でも取引企業から高い評価を受けている。
また、製品の精度のこだわりもセールスポイントになっている。だから他社が30分でできるものも、1時間をかけて作ることもあると言う。
 

 「エーワン精密」は、工作機械などの「コレットチャック」や「カム」などの部品の製造・販売が主。
 オンリーワンがあるわけでもなく、特に優秀な社員がいるという訳でもない。それでも「コレットチャック」(シャープペンの芯をはさむようなもの)では業界6割のシャアを占めている。
 

注文はファックス。受注票は手書き。注文が入れば、エアーシューターで伝票を運び、1分少々で製造部門に伝わる。製造部門は、注文を受けると、あらかじめ途中まで作っておいた製品に、注文に応じて口径の調整や、穴を調整して完成させる。
 

 梅原社長によれば、商売の三原則は「高品質」「短納期」「適正価格」で、「製品を安くすれば売れるけれど、利益を度外視した安さは、いずれ破綻する」という。また、大手企業に対抗する絶対条件は「納期を短くすることだった」 

 
 社員は、親子や夫婦で働いている人が多く、給料は年功序列。会社の利益はその2割が社員に還元される。そのためボーナスの支給額は、全国の8位にランクされている。社員を雇う時は、定年まで面倒を見ると覚悟を決めている。このため職場は明るく、途中で会社をやめる人は全くいない。


 グローバル化が進行する中で、企業が生き抜くためには、経営の効率化を図らなければならないことを経営者であればだれもが認識している。そんな中「設備と人はいい意味でいつも過剰」と言い切れる間逆の発想と実践力とパワーには感服させられた。

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