2010年04月09日

ゆとり世代が中3へ

 本格的『ゆとり世代』がいよいよ中学3年になり、来年高校受験に挑むことになる。新中3生は、小学1年生の時に完全週5日制が実施され、学習内容も大幅に削られたいわゆる「完全ゆとり」の第一世代だ。
 

 「ゆとり教育」は、60・70年代の知識の詰め込み教育、過熱する受験戦争、学校への疎外感、強固な学歴社会、小学生までが遊ぶ暇もなく塾通いに追われる現実をマスコミなどのさかんな喧伝によって「脱偏差値」を目指すべきだという考え方のうえにすすめられた。
 

 文部科学省の推進する「ゆとり教育」は、生徒の勉強の負担を減らし、その分、心に余裕を持たせ、「総合的な学習時間」などを導入することにより、興味や関心、自由な発想を育てよう。そして、国際社会で通用するディベート力や問題解決能力などの本当の学力を身につけさせようということだった。 
 

 しかし、ここに大きな誤りがあった。自分で考える能力は、基礎学力なくしてできるはずもない。新中3生徒が使用した教科書は、数学を例に挙げると、それまでの教科書の内容が4割も削減され、内容もうすいものになってしまった。

 こどもの基礎学力は年々低下し、残されているデータを見ると3X-7(2X+1)=-X+3の方程式の問題の正答率は、96年度:約94%・97年:約93%・98年:約87%・99年度:約73%と20%も落ち込んでいる。
 こどもの国際学力テストの成績はガタ落ち。各国の15歳が受験する学習度到達テストで、2000年には1位だった数学応用力は06年には10位になるなどゆとりの弊害は顕著に表れてきた。
 

 できない問題があったら、解き方を理解し、自力で解き直すスパイラル学習の積み重ねにより基礎学力はついてくる。これにはより多くの問題をこなすことが必要である。これは「詰め込み教育」ではない。ところが「ゆとり教育」は、努力する姿勢をこどもから奪い取ってしまった。


 「ゆとり教育」「週5日制」「総合学習」「観点的評価」⇒通知表の評価が相対評価から絶対評価へ。このような学校教育に学力の危機と限界を感じとった人は、子どもを塾に通わせた。
 「ゆとり」によって塾通いは解消されるどころか、いっそう過熱させることになり、私学を志望する生徒も増えた。学習指導要領に縛られない私学はこれをチャンスとばかりに、土曜日も授業を実施し、公立と私学の差は学習時間の差がそのまま学力の差となった。

 
 来年度から小学校の教科書は改正され、使う教科書の総ページ数は25%も増える。しかし、これも問題だ。週休2日制が確立された現在、増えたすべての学習内容を学校でこなしきれるだろうか。時間的にも難しいのではないだろうか。それだけに塾が担う責任が大きくなるし、塾への期待度も高まってくるのではないだろうか。


 ゆとり世代の生徒は、周囲に対する不平不満が多く、問題を人や社会のせいにする。競争は避けがちで、物事に興味を示さない傾向にあり、自分で探すといった自発性に乏しいと言われている。
 

 そのゆとり第一期生といえる新中3生徒。来年の高校受験に対して、どう鍛えるか私たちの課題が目の前に大きく立ちふさがる。

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